海外のSF・ファンタジー小説紹介ブログ

ようこそ!海外のSF・ファンタジー小説のレビューなどを書いています。ゆっくりしていってください。

科学的なギリシア神話の世界のハリポタ ★★★★ Orphans of Chaos(John C.Wright)

 

 

f:id:sfft:20140824182141j:plain

 ★★★★ Orphans of Chaos(John C.Wright)

 言語 英語

 ページ数 319

 シリーズ 3部作の第1巻

  人称 主人公の一人称(I am ...)

 日本語訳 なし

 ジャンル SF・ギリシア神話・学園

  小説って何を基準に選びますか?もちろん絶対に譲れない条件は、おもしろい事だと思いますし、それがなければエンターテイメントにはなりえません。でも、小説を読むことで、自分の知らない世界を知りたいとか、自分の興味関心を広げたいって思うこともありませんか?もしそうならこの本はアタリかもしれません。おもしろいだけでなく、ギリシア神話と科学の世界観について、もっと知りたくなって、世界が広がると思います。

 主人公のAmeliaは、現代のイギリスの田舎にある寄宿学校の少女です。この学校は不思議な学校です。というのも、生徒がたった5人しかいないからです。主人公のAmeliaと、Victor、Colin、Vanity、Quantinです。不思議なことはもっとあります。5人が5人とも、両親がいなくて、自分の本当の名前を知らなくて、そもそも自分が何歳なのかも知りません。先生に聞いても、はぐらかされるばかりで何も教えてくれません。

 f:id:sfft:20140824182919j:plainあるとき主人公Ameliaが夜に寝室から抜け出して、寄宿学校のホールに忍び込むと、そこでは学校の先生とギリシア神話の神々が会議をしていました。そこでAmeliaは知ることになります。主人公たちの寄宿学校を運営していたのはギリシア神話のオリンポス12神。そして主人公たち5人の生徒は、オリンポス12神に敵対する神々の人質で、人間ではなく神々だったのです。

 Ameliaは同時に、ギリシア神話の神々が、主人公たち5人も含め、科学の歴史における4つの世界観の1つをもっていることを知ります。

 1つ目の世界観は、迷信的な世界観で、5人の生徒のうちのQuantinの世界観です。この世界観をもっていれば、たとえば相手が約束を破ってきた時に、相手にバチをあたえることができます。

 2つ目の世界観は、ニュートン以降の科学の世界観で、5人の生徒のうちのVictorの世界観です。この世界観をもっていれば、たとえば物質の分子配列をかえて毒を作りだすことができます。

 

f:id:sfft:20140825105758j:plain

  3つ目の世界観は、アインシュタイン以降の科学の世界観で、5人の生徒のうちの主人公Ameliaの世界観です。この世界観をもっていれば、たとえば4次元の世界を見て、そこに行ったりできます。3次元の世界の壁も4次元の世界からなら越えることができます。

 4つ目の世界観は、自己中心的な世界観で、5人の生徒のうちのColinの世界観です。この世界観をもっていれば、自分が本当に望んでいることが現実になります。チートっぽいですけど、本心から望んでいないと何もおこりません。自分の片目と交換してもいいくらい欲しくないと、好きな女の子も自分のものになりません。

 ちなみに、最後のVanityは4つの世界観をつなぐ存在です。

 おもしろいのは、4つの世界観のそれぞれに弱点があることです。1つ目の迷信的な世界観は、2つ目のニュートン以降の科学の世界観に負けます。そのニュートン以降の科学の世界観は3つ目のアインシュタイン以降の科学の世界観に負けます。アインシュタイン以降の科学の世界観も、4つ目の自己中心的な世界観によって負けてしまいます。そして、自己中心的な世界観も、1つ目の迷信的な世界観に負けてしまうのです。

 主人公Ameliaたち5人の生徒は、それぞれの世界観をうまく使って、オリンポスの神々を出し抜き、寄宿学校から脱出することに挑戦します。

 科学の歴史とギリシア神話というとっつきにくい要素ですが、物語が普通の女の子である主人公の目を通して語られるので、とてもわかりやすく感じます。

 また、主人公たちが、少なくとも見かけ上は十代の少年少女なので、恋愛要素もあります。主人公AmeliaもVIctorが好きですけど、Victorはまじめすぎて、それに気付いていないようです。ですが、2巻以降でどう展開していくのか楽しみです。

 SFはほとんど読んだことのない私でも楽しめました。おすすめです。