氷河期の近代ヨーロッパを舞台にした冒険×ロマンス ★★★★ Cold Magic(Kate Elliott)
★★★★ Cold Magic(Kate Elliott)
言語 英語
ページ数 580
シリーズ 3部作の第1巻
人称 主人公の一人称(I am ...)
日本語訳 なし
ジャンル 歴史改変モノ・魔法・ロマンス
歴史のifって考えたことはありませんか?もし氷河期がずっと続いていたら。もしポエニ戦争でカルタゴが負けなかったら。この小説の舞台は、まさしくそんなifの世界です。時代は1837年なのに、世界は氷河期の氷で覆われています。飛行船が大陸を横断する時代なのに、古い氷の魔法が残っています。そして、現実にはポエニ戦争で滅んだはずのフェニキア人がヨーロッパ中に散らばっています。
主人公のCatも、そんなフェニキア人の少女です。氷河期なので大陸とつながったブリテン島のAdrunamという町で大学に通いながら、おじと一緒に暮らしています。どちらかと言えば、マジメな性格の女の子です。
ある日Catは、おじが昔結んだ契約によって、氷の魔法使いAndevaiと結婚することを強制されます。そしてAndevaiに問答無用で連れ去られてしまいます。このAndevaiがなかなか冷たい男なんです。「おれみたいな権力のある男と結婚できて幸せだろ」みたいなことを平気で言います。そしてCatとAndevaiは、正体不明の刺客に襲われます。
物語は、ナポレオンを連想させるCamjitaや、アメリカ大陸から来た科学技術に長けたトロールたち、氷の魔法使いの一族、フェニキア人という様々なプレーヤーを巻き込みながら、ダイナミックに発展していきます。
主人公CatをさらったAndevaiは、氷の魔法を使う氷の魔法使いなのですが、この本の中の魔法の設定はとてもおもしろいです。氷の魔法は、精神世界から力を吸い上げることによって、現実世界の自分の周囲の温度を下げて扉の錠をこわしたり、氷の嵐をおこしたりする魔法です。この精神世界というのは、現実世界とつながっています。たとえば、氷の魔法使いAndavaiの魔法の馬車は、一方のドアが現実世界、もう一方のドアが精神世界につながっています。
氷の魔法のルーツは、昔からフランスのあたりに住んでいたケルト人の魔法と、アフリカのマリ王国の魔法にあります。マリ王国の人たちは、昔、アフリカでおこった大惨事の難民のようです。
こんな感じで、魔法の力の源が、世界観や歴史の謎とリンクしているので、何かリアリティを感じます。たとえば「魔法とは人間の内なるパワーだ」みたいに唐突に出てくる薄っぺらい魔法と違って、こんな魔法もあるかもしれない、と感じてしまいます。
主人公CatとAndevaiのロマンスも見所です。最初は相手を見下したり、軽蔑したりしていた2人ですが、徐々にお互いを理解しあい、距離を縮めていきます。
2巻では舞台がアメリカ大陸に移るようです。歴史好き、ロマンス好き、スチームパンク好きなら、おもしろく感じること間違いなしです!